ちびくろ・さんぼ | 活字中毒

ちびくろ・さんぼ


ちびくろ・さんぼと聞いて、懐かしいなぁ~と思う方もずいぶんいるのではないでしょうか。私もその1人です。人種差別だという声があり、岩波書店から出ていた絵本は1988年に絶版になってしまいました。図書館などでも閉架書庫にしまわれていて普段は気軽に見ることができなくなってしまってます。

ところが、今年の4月にこのちびくろ・さんぼの本が復活するというのです!!ただし、今回は岩波から出るわけではありません。瑞雲舎 という出版社が復刊させるのですが、挿絵などは岩波版とまったく同じ。ただ1つ違うのが岩波版の時は2話入っていたものが、有名な1話のみになって出版されること。それを除けば当時と同じイラスト・ストーリーのちびくろ・さんぼを読むことができるようになります。



黒くてかわいくてさんぼという男の子がいました。ママのまんぼに素敵な服を作ってもらい、パパのじゃんぼに靴、傘を買ってもらって嬉しそうに散歩をしているんです。すると、4匹のトラが順番にやってきて食べようとします。さんぼはそれぞれのトラと交渉し、自分が持っている服や傘と引き換えに食べることをやめてもらいます。
4匹のトラたちは、さんぼにもらった服や傘などを身に着けて自分が一番かっこいい!と主張して喧嘩をしだします。1本の椰子の木の周りを喧嘩しながらぐるぐるぐるぐる。気がつくとトラはバターになっていて、さんぼのパパがうちへ持って帰って、そのバターでママがホットケーキを焼いてくれるというお話。



子どもの頃の私にとって、トラがぐるぐる回っているうちにバターになってしまうのがすごく印象的でした。このバターで作ったホットケーキ、食べてみたいなぁって思っていたものです。

でも、この本って本当に差別なんでしょうか?

アメリカの新聞や市民団体から差別だ!という声があがって、各国で絶版に追い込まれたらしいのですが・・・。さんぼは黒人ですが、トラが白人という設定だと解釈した方もいるらしいのです。食べようとしたトラ、結局はバターになっちゃっているんですけどね。

人種差別という問題は本当に難しいと思います。ただ、この絵本は子供にとってとても印象に残る素敵なものだと思うのです。私は今回、復刊に先駆けて図書館で借りてきて息子に読んであげました。とても楽しそうに聞いていました。

この絵本を読んでもらった子供はある種の人種差別を覚えてしまうのでしょうか。さんぼが裸だから?トラに食べられそうになってしまうから??地面に落ちていたバターを拾って持って帰るから???おそらく子供には差別という感覚はないと思います。もし子供がこの本を読んで差別を覚えてしまったのだとしたら、それはきっと大人の責任。大人が偏見を持って読み聞かせると、当然それが普通に受け入れられてしまいますもんね。ただ、この偏見はちびくろ・さんぼにだけ言えるものではないと思います。もし主人公が色の白い男の子だったら、絶版にならなかったのかなぁ。そういう風に肌の色などを意識しすぎることのほうが、差別のような気もするんですけど。

私にとって、この絵本は色の黒い男の子とトラのお話というだけ。しかも、トラがぐるぐる回ってバターになっちゃって、そのバターがおいしそうなホットケーキに変身しちゃった。いいなぁ~食べてみたい♪という感じ。それ以上でもそれ以下でもありません。このイラストも私は真っ黒な体に目と口だけ目立っていて、とってもキュートだと思うんですけどねぇ。

著者: ヘレン・バンナーマン, フランク・ドビアス, 光吉 夏弥
タイトル: ちびくろ・さんぼ