失われた町 / 三崎亜記
となり町戦争 を書いた三崎亜記さんの長編第2作目です。前作では不思議な目に見えないとなり町との戦争を描いていましたが、今回も同じく町が中心になってます。しかも、今回は町が失われてしまうのです。ひっそりと、音もなく。その町に住んでいる人々は一緒に失われます。町の消滅と一緒に・・・。
相変わらず「この人の頭の中はどうなっているんだ??」と聞きたくなるような不思議な設定で、読みながら何度も驚かされました。
失われた町「月ヶ瀬」に集まる、失われた人々の話です。章ごとにいくつかの時代があり、出てくる人物は重なっていますが時代ごとに主人公が変わっていくスタイルの書き方です。前作「となり町戦争」でストーリーはおもしろかったのにも関わらず、人物描写が弱くて入り込めなかった私ですが、今回はだいぶよくなっていた気がします。(なんとも偉そうな発言!?)
相変わらずSF的な設定がおもしろい。建物は残るのに、町の人だけがひっそりと消滅してしまうという不思議な出来事。そして、その消滅をなんとか食い止めたいと願う人々のとても強い思いが伝わってきました。自分の命に代えてでも消滅をなんとか解明したいと願うたくさんの人がいて、その願いはとても悲しくて切なくてつらいものでした。ここまで様々なものを犠牲にしても戦える一途な強さがうらやましいと思うくらい。
主人公の1人である桂子さんは、とてつもなく心の強い人です。彼女の場合は強くならざるを得なかったという部分もあるのかもしれません。様々な理由で・・・。(この辺はネタばれになってしまうので詳しくは書けませんが)
たとえ明日失われるとしても、その瞬間まで自分の為すべき事をして、
生き続けようと思います。
望みは、きっと誰かがつなげてくれると思っています。
これは作中に出てくる桂子さんの言葉です。
願いは、自分がいなくなったとしてもきっと誰かがつなげてくれる。
自分の知らない人かもしれないけど、誰かがどこかできっと。
正直なところ、私はどちらかというと「自分1人で頑張っても何も変わらない」と思って行動しない人なのですが、こういう考え方もあるんだなぁと驚かされました。思いは誰かがつなげてくれる・・・。そう思いながら行動できたら、素敵なことなのかも。
タイトル:失われた町
著者:三崎 亜記
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