無銭優雅 / 山田詠美
1年ぶりの新作(エッセーは除く)。感想は「やっぱり詠美さんって素敵だぁ・・・」ってところでしょうか。日常、誰にでもありそうな恋を書いているのに、なんだかうっとりしてしまう。今回の作品は昔の作品に比べて、ぐんと身近な雰囲気になっています。なんせ中央線沿線ですから、私の生活区域。身近なんてもんじゃありません。しかも、どちらかというと熱血ポンちゃんのエッセーを読んでいるような語り口なので、うっかり詠美さん自身のリアルな恋愛を書いている?って思ってしまいそうなくらいです。
42歳の栄と慈雨の恋。年だけはとったけど大人になりそびれてしまった2人が、お互いを最大限に甘やかしながら恋を満喫している。死ですら彼らの恋のスパイスでしかない。「いつか死ぬかもって思うと、うっとりする。おまえのこと、すごく大事にしたくなる」「どうせ死ぬなら、一緒に死のう」そんな甘い言葉を交わしながら、一緒にいることを楽しむ2人。大人になりきれなかった2人の、とても大人な恋の話。
栄は慈雨を思いっきり甘やかす。甘い言葉は無尽蔵に出てくるし、お互いを甘やかすこと限りない。その昔「バカップル」って言葉があったけど、栄と慈雨はまさにそんな感じ。でも、若いカップルに向けられたその言葉とはちょっとニュアンスが違うかな。若くない2人だから、酸いも甘いもつくした2人だからこそ、読んでいて気持ちがいい。軽いのりの甘やかす言葉が心に響く感じがします。
経験は人を学ばせるけれども、強くはさせない。強がる術を身に付けさせるだけ。むしろ、どんどん、私は、臆病者になって行っている。恐いものなしだったころが懐かしい。けれど、もう戻れないし、戻りたくない。臆病者であるのを自覚するからこそ、失いたくないものへの強烈な欲望に身をゆだねることが出来る。経験が仕立て上げた贅沢な臆病者。(文中より)
上記は作中での慈雨が感情です。
臆病だからこそ、失いたくないものがわかる。
詠美さんらしいなぁ・・・。
詠美さんは年を重ねて、ますます魅力的な人間になっているような気がします。
自分の男を甘やかすこと、私ももっと徹底的にやってみようかな。
そしたら、栄と慈雨みたいに、いつまでも幸せで仲良しでいられるのかも。
タイトル:無銭優雅
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