死神の精度 / 伊坂幸太郎 | 活字中毒

死神の精度 / 伊坂幸太郎

この本の主人公は死神。死神である千葉が、自分の担当する「死ぬ予定の人」を観察する様子を描いています。設定がなんだか奇抜ですが、これがまたおもしろい。死神っていうとなんとなく私のイメージでは暗くて恐ろしいという感じの印象なのですが、この本に出てくる死神たちはちょっと違う。どちらかというと人間的で感情もあるし、好みもある。もちろん死神なので食欲や睡眠欲といった人間にある普通の欲求はないのですが、彼らにも不満の感情があったりするんです。なので、読んでいるとちっとも恐くなくて、たんなる「死神」という職業の人という印象です。

死神に目を付けられてしまった6人のストーリー。死神である千葉は情報部から依頼された人間を調査して、1週間後に死を迎える人間として「可」「見送り」の判断をする仕事をしている。趣味は音楽を聴くこと。死神である千葉が出会った6人の人間は、8日後に死ぬのか、死なないのか・・・。いったい死神は何を思って仕事をしているのか・・・。

死神の仕事がターゲットである人間に接触して会話し、この人間が死ぬべき人かどうか決めるというシステムだからおもしろい。伊坂さんの頭って本当に不思議な発想でいっぱいですよね。いつも彼の作品を読むたびに驚かされます。この死神の仕事は基本的にほとんどの人間は「可」になって8日目には死ぬことになるのだけど、それを見送ることもできるんです。それを決めるのは担当している調査部の死神しだい。何を基準にするかも、担当の死神しだい。死神にも感情があるわけです。クールなのに、意外と情にもろい部分なんかもあったりして死を書いているわりには読み心地が爽やかな感じです。


しかも、死神である千葉は人間の風習や言葉遣いが微妙に理解できてない部分があり、不思議そうに聞き返したりするシーンは思わずくすりと笑いたくなる感じなんです。本人は真剣なだけに、よけいに面白みが増すというのでしょうか。相手は死神ってわかっていてもなんだかこの千葉さんがかわいらしい男性に思えて、読み終わる頃にはすっかり好きになってしまいました。6つの短編なのに、微妙にリンクしている辺りも伊坂さんらしくておもしろかったです。


死神・千葉さんのシリーズをもっともっと読んでみたいなと思わせる作品でした。続編でないかなぁ。


タイトル:死神の精度

著者:伊坂 幸太郎

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