陰日向に咲く / 劇団ひとり
- なんで表紙も背表紙も劇団ひとりさんの写真なんだろう・・・。本がそんな感じだから、てっきり私はエッセイかと思ってました。だって、芸人さんだし。でも、違いましたよ。彼は単なる芸人さんではなく、ちゃんと作家さんでした。予想以上におもしろくて、驚かされました。ただの暗いお兄さんかと思ってたのになぁ。 しかも、この本が処女作なんでしょ?そんなことちっとも感じさせない筆力で、私をぐいぐいと引き込んでくれました。ラストにはちゃんとくすっと笑いたくなるオチを入れてるあたりも、ひとりさんだなぁって思わせてくれます。
この本には短編が5つ入ってます。
◆道草
あの場所で半年前、あの青年と出会うまで、私はホームレスだった。
仕事でプレッシャーを感じ、憧れのホームレスになった主人公の話。
◆拝啓、僕のアイドル様
あまり売れていないマイナーアイドルミャーコのファンな主人公。自分の生活を削ってでも、憧れのミャーコに贈り物をしたい。でも、実際はミャーコの前に立つとモジモジしてしまうだけの地味なファンで・・・。
◆ピンボケな私
二十歳、フリーター、女、A型、高卒、茶色のショートで、百五十八センチの細め。自分のことを語るときにこのくらいしか言えない主人公。夢は一応カメラマンということになっているけど、それすらも自信がなく・・・。
◆Over run
ギャンブルにはまっている主人公。キャッシングをくり返し、あっというまに負債の山。一発逆転を狙ったけれど・・・。
◆泣き砂を歩く犬
東京に行けばきっと変わると信じていた鳴子。売れない芸人に恋してしまった鳴子。人生そんなに簡単に変わるはずもなく・・・。
どの主人公もどちらかというとイマイチな人生を歩んでいる。普通の人とはちょっと違う思考だったり、世間的に普通といわれる人のラインから若干はみ出したりしてる人たちの集まりです。トホホな感じがめいっぱい書かれているのに、なぜか愛しくなってしまうような雰囲気が漂っている。おそらくひとりさんがそういう人たちに対して、優しい目を持っているからなのかな。とても簡単に書いたように思える文章なのに、時々惹かれる言葉が入ってたりして。ひとりさんの感性は好きだなと思わせてくれました。
ちなみに、どれも別々の短編に思えるのですが、実は最初からちゃんと読んでいくとつながっています。なので、1話から順番に読むことをおすすめします。よかったですよ、この本。
- タイトル:陰日向に咲く
- 著者:劇団ひとり
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