活字中毒 -38ページ目

赤い長靴 / 江國香織

日和子と逍三の夫婦の話です。結婚して10年ですが、まだ子供はいません。逍三がうちへ帰ってくると、急に家の中がさわがしくなります。今までの空気をがらりと変えてしまうくらい。日和子は昼間の出来事など、いろいろ話しかけるのですが逍三はまったく聞いていません。必要最低限の会話は成立しているのかもしれないけど、日和子の言いたいことは伝わっていないみたいなんです。自分の言葉が伝わらないたび、日和子は思わずクスクス笑ってしまう。悲しみを閉じ込め、諦めを込めて。

週末の昼間、友達に会いに行くことすら逍三には不機嫌の対象になるんです。3週間も前に言ってあっても、当日の朝になると機嫌が悪い。「昼ごはんはどうすればいいんだ?」って。

一緒に行った散歩先のバザーで、欲しくもないものをどんどん買い与えられ「もういいだろ」って感じで満足げの逍三。日和子は何度も「欲しくない」と伝えたのに。

そんなの、我が家だったらありえない。「お昼?適当に自分で食べてよ」って言っちゃう。お互いが欲しくもないものを、ダンナサマが買っているのを見かけたら「なんでそんなもの買うの?」って止めちゃう。でも、日和子にはできないんです。「ほんとうのこと」は言ってはいけないから。「ほんとうのこと」に取り憑かれてしまったら、最後にたどり着く先は1つしかないから。

ほんとうのことを言えない2人って幸せなんだろうか。確かに本当のことを言ってはいけないものもあるし、どこかで諦めなければいけない(妥協とも言うのかなぁ?)箇所もあると思う。だけど、日和子と逍三は100%のうち90%くらいすれ違っているように見えるんです。もしかしたらこの夫婦って逍三は幸せかもしれないけど、日和子にとっては幸せとは言えないのかも。でも、なんで夫婦を続けているのか。きっと、どこかに好きなところがあるからなんだろうなぁ。私には理解できない部分で。

今回の作品は共感できる部分もあり、理解できない部分もあり。前回読んだ「東京タワー 」に近い感想。私的にはイマイチな作品でした。ただ、相変わらず日常の一部をきれいに切り取り、描写するのがとても上手だなぁと感じました。言葉の選び方がきれい。内容としてはとてもきれいとは言えないのに、なぜか透明感のある感じがします。


著者: 江國 香織
タイトル: 赤い長靴

わたしがあなたを選びました


あなたが笑い喜ぶときに、
        わたしは幸せに満たされます。
あなたが怒り悲しむときに、
        わたしは不安に襲われます。
あなたが憩いくつろぐときに、
        わたしは眠りに誘われます。
あなたの思いはわたしの思い、
        あなたとわたしは、ひとつです。
                        (本文抜粋)

この本は私が息子を妊娠中に友人からプレゼントされたものです。彼女も同時期に妊婦だったのですが、マタニティ教室で助産婦さんに読んでもらい、とても感動したので同じ感動を!とプレゼントしてくれたのです。一緒にファミレスで食事をしているときに渡されたのですが、その場で読んで思わず泣いてしまいました。

この頃私はちょうど出産前で里帰りをしている時期で、もう9ヶ月か10ヶ月くらい。だんだんお腹も大きくなり、好きなことができなくなったり自由に動き回ったりできなくなっていた時期で結構大変だった頃だと思います。

大好きなお酒も妊娠発覚と同時にやめました。太りすぎるとよくないということで、甘いものも極力さけるようにしていました。お腹の子のために、できるだけバランスの良い食事や健康に気をつけるようにしていました。

ヒールの靴を履いていると「転んだら危ないからやめなさい」と言われ、今までほとんどズボンなんて穿いたことなかったのに「スカートは冷えるからよくない」「腹帯してるの?なんでしないの?」と言われたり。様々な人から様々な規制をされていたのを覚えています。幸い、私の両親や主人はそのような規制をするタイプではなかったので家で同じような苦痛を味わうことはなかったのですが、知り合いや道ですれ違う知らない人(おそらく妊娠経験者とかなんでしょうけど)からいろいろなアドバイス?をもらいました。みんなきっとよかれと思って言ってくれていたんでしょうね。でも、私は結構苦痛だったのを覚えています。

おかあさん、
わたしのためのあなたの努力を、わたしは決して忘れません。
お酒をやめ、タバコを避け、好きなコーヒーも減らしましたね。
 ・・・・・途中省略・・・・・
すべての努力はわたしのため。あなたを誇りに思います。


本文中の上記の部分で、思わず涙がホロホロでてしまったんです。お腹の子が「頑張ってくれてありがとう」って言ってくれているような気がして。残り1ヶ月程度でしたが、また頑張れる気がしてきたんです。

今でも読むと、妊娠中のこと・出産のときの喜びを思い出します。周りに妊婦さんがいたら、ぜひこの本を贈ってあげてください。もし、いま妊婦でちょっとつらいなと思っているようなら、ぜひこの本を読んでください。心が温まる感じがして、お産まで頑張れると思いますよ。


著者: 鮫島 浩二, 植野 ゆかり
タイトル: わたしがあなたを選びました

まどろむ夜のUFO / 角田光代

角田光代さんって恥ずかしながら今まで知りませんでした。132回の直木賞 受賞者の方なんですね。偶然、図書館の「今月のお薦め」みたいなコーナーに置いてあって借りたのですが、この本も96年に野間文芸新人賞 を受賞しているそうです。このまどろむ夜のUFOは3作入っているのですが、どれも微妙にシュールな感じ。

主題の「まどろむ夜のUFO」は、私の知らない彼女とのデートのためにジャムやクッキーを作る弟、魂の前世を信じる弟の友達、必ず5日おきにデートする几帳面?なサダカ君の3人の不思議な男性たちに囲まれている私の話です。

どうもこの本に出てくる人たちは、みんなちょっとずれている気がするんですよ。普通ではない感じ。でも、普通の基準って難しいですよね。UFOを信じる人。人には見えないものが見える人(いや、見えていないのかもしれないけど、見えていると信じている人たち・・・かな)。そういう人たちを「普通ではない」と言ってしまってよいものなのか難しいところですよね。誰が普通って決めたのかというところが問題ですし。

まぁ、普通論はさておきとして。
この本には私としてはちょっとお近づきになるのは悩ましい感じの人たちばかり出てくるんです。でも、なぜかおもしろい。近づきたくない世界だけど、ちょっと覗いてみてしまいましたって感じなんですよ。

別に結論がでるわけでも、落ちがつくわけでもないんですけどね。微妙な感じで普通と普通でない境界線が描かれていると思います。おそらく言葉の選び方も上手なんでしょうね。なかなか読みやすかったと思います。

著者: 角田 光代
タイトル: まどろむ夜のUFO

11ぴきのねことぶた


この絵本は昔からある「11ぴきのねこ」シリーズの1つです。ちなみに1976年発行とのことなので、偶然にも私と同じ年。(^_^;)

【ストーリー】
11ぴきのねこが旅に出ます。途中で古い空き家を見つけ、そこに一晩泊まることにしました。あまりにも汚いので掃除をしてみたら、あらきれい♪
この家がとても気に入ってしまったねこたちは「ここを11ぴきのねこの家にしよう」と決めてしまいます。ところが突然1ぴきのぶたがやってきて「ここは僕のおじさんの家ではないですか?」と聞いてくるのです。ねこたちは「ここは11ぴきのねこの家!!」と否定して追い出してしまいます。遠くから旅をしてきたぶたくん、行き場がないので近くの丘の上に家を建て始めます。一人で頑張るぶたを不憫に思ったねこたちは手伝いをしてあげているはずだったのですが・・・・。
できあがった家が気に入ってしまい「11ぴきのねこの家」と看板を掲げてしまうのです。ぶたは仕方なく元のねこたちの家(ぶたのおじさんの家なんですけどね)へ住みます。ある日台風が来て、ねこたちの家は飛ばされてしまい、ねこたちも一緒に飛んでいってしまいます。



すごく勝手なねこたちなんですけど、なんとなく間抜けで憎めないんですよ。もともとは空きやとはいえ誰かの家だったものなのに、勝手に自分たちの家にしてしまったり、できあがったぶたの家を横取りしてしまったり。すごくわがままですよね。だけど、最後は天罰?でも下ったかのように、完成した家ごと台風で飛ばされてしまうんです。ちょっと教訓めいているのに、思わずあらら~と笑ってしまう感じがいいんです。

うちの息子は大のお気に入りになったらしく、最近はこの本ばかり何度も繰り返し読んでくれとせがみます。


著者: 馬場 のぼる
タイトル: 11ぴきのねことぶた 

おとりよせ日和 / おとりよせネット


おとりよせってしたことありますか?私は子供が小さいのでなかなか思うように買い物できず、よくネットで欲しいものを探しては注文しています。が、あんまり食べ物には手を出していなかったんです。この おとりよせ日和 という本は、おいしいものを吟味して118種類も紹介した本です。しかも、見開きどーんと1つの商品しか紹介していなくて、右側に紹介者の説明文、左側に写真とどっぷりとその商品の魅力に浸ることができるのが素敵。1つのページにいろいろな商品が紹介されていると、目移りしてしまいがちですがこれなら問題なし!

ところで、ネットを使う私がなぜこの本を買ったのか。それはね、おばーちゃまのためなのです。私のダンナサマのおばーちゃまはもう90歳を超えてしまったので膝の調子も悪く自由に出歩くことができません。そんな彼女の誕生日が今月なので、どんなプレゼントがいいか悩んでいたんです。趣味がテレビ鑑賞と庭の草花のお手入れなんですよ。そんな義祖母が喜ぶプレゼント・・・。悩んだ挙句、ちょっと前におばーちゃまと話をしたことを思い出したんです。

「最近よくテレビでお取り寄せって聞くわね~。私も試してみようかしら。」

私が勝手にお取り寄せしてもきっとおいしいけど楽しみが少ないと思ったんです。そこで、この本をプレゼントしました。この本の中から好きなものを1つ誕生日プレゼントするよ。お取り寄せしてみよう♪と渡しました。

彼女のリクエストは浜名湖山吹のうなぎ長蒲焼 です。めちゃくちゃおいしそうで、私までついでに注文したくなっちゃいました。同居ではないので、今回の注文で私の口に入らないのがすっごく残念。今度、別の予算で注文しなくっちゃ♪


著者: おとりよせネット
タイトル: おとりよせ日和