活字中毒 -40ページ目

四日間の奇蹟 / 朝倉卓弥

第1回『このミステリーがすごい!』大賞 の大賞金賞を受賞した作品です。2005年6月には吉岡秀隆さん・石田ゆり子さん主演で映画化がされるそうです。

読んでみたら「これってミステリー?」という感じでした。そこが疑問だったくらいで、作品としてはとてもおもしろかったです。時々専門用語の多いページがあって読むのが大変だったのですが、集中してあっという間に読んでしまったくらい。

ストーリーは・・・。
留学中のオーストラリアである事故に遭遇して指を失ったピアニスト如月敬輔は、その事故で両親を亡くした少女千織を家族として迎え入れます。彼女は脳に障害を負っているのですが、一度聴いただけの曲をピアノで完璧に再現できるという特殊な音楽的才能の持ち主でした。その千織の才能を生かし、2人は依頼に応じて各地を巡りピアノを人々に聴かせる日々を過ごしています。いつもの演奏会でとある山奥にある施設を訪れた敬輔は、千織と共にそこに数日間滞在することになります。そこには11年ぶりに再会した高校時代の後輩、岩村真理子が勤めていました。滞在中にヘリコプターを雷が直撃し墜落するという事故がおこり、千織と真理子はそれに巻き込まれてしまうんです。意識を失って重態の真理子と、その日を境に変わってしまった千織。たった4日間の奇蹟のお話です。

将来有望だったのに事故で指を失ってピアニストとしての道を断たれてしまった敬輔の葛藤、知的障害者の千織の本当の気持ち、そして敬輔が初恋の相手だった真理子の3人の感情の表現がとても細やかでした。あぁ、こんな奇蹟が本当にあったらいいなぁと思わせるくらい。ファンタジーが好きな私には向いていたみたいです。ミステリーとしてではなく、ファンタジーの作品として読んでもらいたいです。

著者: 浅倉 卓弥
タイトル: 四日間の奇蹟

吉本ばななさんについて

吉本ばななさんの本に初めて出会ったのはいつだろう。思い出せないけど、気がついたら私の本棚に並んでました。多分、キッチンを読んだのが始まりじゃないかな?

キッチンは両親を早くに亡くして祖母に育てられたみかげのお話。台所がこのお話のキーワード。みかげの好きな場所は台所なんですけど、私も台所は大好き。見ただけでその家に住む人たちの性格が分かる気がするんですよ。だから遊びにいった友達の家で台所が覗けると、住んでいる人の心の隅を見せてもらったみたいでちょっとドキドキしちゃう。とはいっても、自分のキッチンを見られるのは恥ずかしいんですけどね。整理整頓がへたくそな私のキッチン、お友達にはどんな風に見えているのか心配になってしまいます。

ばななさんの作品に出てくる子ってみんなどこか冷めているんですよ。冷静って言うのかなぁ。でも、全体的に見るとすごく優しさとか献身とかそういうものが表現されている気がするんです。それに、作品に出てくる主役以外の登場人物がすごくいい味を出してるんですよ。一人一人が個性的で、魅力のある人ばかりなんです。「こんな人いないでしょう」って思うんだけど、実はいたらいいなぁ~って思っちゃいます。 やっぱり人間っていいなぁって思わせてくれるやさしい作品ばかりですよ。

→ TUGUMIについての感想


【お奨め本】


キッチン


ハネムーン




アムリタ


TUGUMI(つぐみ)

和宮様御留 / 有吉佐和子

この本のタイトルにもなっている和宮様とは、幕末に徳川家へ嫁入りした(降嫁した)皇女のことです。ドラマ「大奥」で安達祐美さんが演じた事は記憶として新しいと思います。この有吉佐和子さんの本では降嫁した和宮は偽者だった!ということを前提にしたストーリーなのです。

もちろん完全なノンフィクションではないのですが、さまざまな理由からお嫁入りした和宮様は偽者だったと推測されることが多かったようなのです。たとえば、京都にいた頃の和宮様は足が跛だったが、お嫁入りした和宮様は健康な足の持ち主だった。また、お嫁入りの出発の際は両手があったにもかかわらず、増上寺に収められている和宮様の遺体は左手首がなかった!など。もし本当だとしたら・・・徳川にお嫁入りした和宮様はまったく別の人物だったということになりますよね。もちろんフィクションですから有吉さんの想像の世界ですが、いろいろな裏づけもあるみたいです。

主人公のフキという少女はただの奉公人です。もちろんかなり下層の身分なわけです。しかし、政略結婚をさせられることを拒否している和宮のために、母である観行院の差し金で和宮の身代わりとして生活させられることになってしまいます。皇室と徳川との間を取り持つ大事な人間が、他人と入れ替わっていたと知れたら一大事。もちろんこのことは誰にも秘密で、和宮様とその母・乳母の藤の3人のみが知っているんです。フキは何も知らされずに連れてこられ、気がついたら和宮様の影のように生活をさせられて隙を見て入れ替えさせられてしまっているんです。でも、恐怖からか自分がなぜそのような目にあっているのか確認することもできず、言われるままに和宮として生活をし、降嫁のために江戸へ向かって旅立ちます。

政略結婚が嫌で逃げ出した和宮様はいいとして、突然連れてこられて着物を着せられ身代わりにされたフキのことを思うと心が痛かったです。誰にも文句ひとつ言えず、なぜ自分がこのような目にあっているのか、そして今後自分はどうなるのかを教えてもらうこともできない。かなり心細かったと思います。そして、最後には悲惨な死を遂げてしまうのです。

そこでおもしろいのが、フキが死んでしまったから降嫁はおしまいとはならないこと。またどこかからフキのような女の子を探してきて旅を続けるわけです。なぜばれないのか不思議なくらい。そして、結局は偽者を徳川へ嫁がせる。そして、偽和宮様は徳川家で生活をし、普通に死を迎えることになります。

有吉佐和子さんの作品は重たいテーマや暗いものが多いのですが、悲惨さはあまり感じません。心理描写がとても細かいので、フキの気持ちが手に取るようにわかります。のめりこみますよ。

著者: 有吉 佐和子
タイトル: 和宮様御留


【その他のお奨め】








悪女について  恍惚の人  華岡青洲の妻

風と共に去りぬ(Gone with the Wind)


今回はちょっとクラシックな本のお話。

私は中学生の頃この本に初めて出会い、以来何度も繰り返して読む大好きな本に加わりました。気が強くてアトランタ一の美人といわれたスカーレット・オハラが主人公。彼女は自分の望みをかなえるためであればどんなことでもするんです。彼女が愛していた人が別の女性と結婚をしたことに対する反動で愛していない人と結婚をしたり、生活に必要なお金を手に入れるために妹の婚約者をうばったりするんです。そういう部分だけを見ているととても嫌な女なのに、なぜか私は彼女の性格にひかれてしまうのです。彼女の強く逞しい性格にとても憧れ、私もこんな風になりたいと思ったこともあります。

私は彼女の考えの根本にある「明日は明日の風が吹く」という言葉が好きです。どうしても苦しくなった時に彼女はいつもこれをつぶやくのです。「悲しいことや苦しいことは、また明日考えよう。もしかしたら明日はもう少し良くなるかもしれない。」という意味を込めて。これって現実から逃げているのかもしれないけど、結構前向きな考え方だと思うんです。ショックを受けている時に考えても、あまりいい考えは出てこないですよね。だから、一日おいて落ち着いてからちゃんと考える。実際に彼女は翌日になると、現実を受け入れて何らかの対応をちゃんとするんです。どんなことでも負けずに立ち向かう強さがあるんです。私も彼女のように何事にも負けない強さを持ちたいです。

ちなみに私、就職活動の際に「スカーレットオハラ」が憧れと履歴書に書いていたのを思い出しました。当時はとっても素敵なたくましい女性というイメージが強かったのですが、今考えてみるとあまり一般企業にスカーレットみたいな女性はいらないですよね。こんなワガママで自分勝手な子が会社にいたら、私だって嫌だろうし。だからなかなか就職が決まらなかったのかなぁ。(笑)

そうそう、このスカーレットという言葉の意味って知ってますか?「緋色、深紅色」以外に「みだらな」という意味もあるんですよ。これって彼女が周りから見られていたイメージとぴったりですよねっ。


著者: マーガレット・ミッチェル, 大久保 康雄, 竹内 道之助
 風と共に去りぬ (1)
 風と共に去りぬ (2)
 風と共に去りぬ (3)
 風と共に去りぬ (4)
 風と共に去りぬ (5)

長靴下のピッピ

私が小学生の頃、長期の休みになるとおばあちゃんの家へよく行きました。おばあちゃんの家の本棚にあったのが、この本。おそらく母の姉妹(母を含めて4人が女、1人が男)の誰かが読んでいたものなのでしょうね。

トミーとアンニカ兄妹の家のお隣「ごたごた荘」に越してきた、猿のニルソン氏と長靴下を履いた型破りな少女ピッピのお話です。ものすごい怪力なんですよ。見た目は普通の女の子なのに、馬を一頭かるがると持ち上げちゃうくらいすごいの。しかも、すごくお金持ちなのに、お金の使い方がいまいちわかってなかったり、いわゆる一般的な常識が欠けていたりするんです。性格は個性的というのかなぁ。お父さんは船長さんで航海中に行方不明になってしまい、小学生くらいの女の子なのに一人暮らし(サルのニルソン氏はいますが)なんです。

なかなかすごいストーリーでしょ?小学生だった私は、赤毛でとてつもなく力持ちな&ちょっとおかしな少女ピッピのお話に夢中になり何度も読みました。最近になって、再び読んでみたら、やっぱりおもしろかった。ちょっと馬鹿げたところもあるんですけど、そこがまたピッピの魅力です。こんな友達がいたら、毎日が楽しいのになぁ。

ちなみに、全部で3部作になっています。

長くつ下のピッピ
ピッピ船にのる
ピッピ南の島へ

2巻は、行方不明になっていたお父さんが現れて感動の再会をします。しかも、南の島「クレクレドット島」の王様として!そして、3巻ではピッピやトミーとアンニカを船に乗せて、南の島へ連れて行くお話になっています。私は小学生の頃、1巻しか読んだことがなく、最近になって3巻まであることを知りました。続編も面白かったですよ。

著者: アストリッド・リンドグレーン, 大塚 勇三
タイトル: 長くつ下のピッピ